HOME   >   機構概要   >   理事長の部屋

理事長 あいさつ(平成28年6月10日)

農地中間管理事業推進の基本姿勢

機構集積協力金の取扱いが、農水省の事情により5月24日まで決定されませんでした。 機構集積協力金の取扱いは中間管理事業の方向性を左右しますので、決定を待っていたため今年度のごあいさつは掲載が遅くなりました。

1 実績と経過

理事長近影

中間管理事業も2年目が終わりましたが、昨年度は一昨年の分も入れて、累計で203haを担い手の方々にお貸しすることができました。

ところで、一昨年度、機構から担い手の方々にお貸しできたのは、わずか24haでした。この原因は、制度発足の初年度であった一昨年度は、中間管理事業の実施方法や機構集積協力金の取扱いなど事務手続きの整備に時間を要し、推進体制の整備にまで着手できず、活動できたのが市町の担当者、県の出先の農業職、一部のJA職員だけだったことにありました。

“これではだめだ”ということで、一昨年度末から昨年度当初にかけて推進体制を整えました。

第1に、県内の農業に関係する者すべてを集めて、全県的に推進できる体制を整備しました。
 ー県全体での推進会議の設置、地方局単位の推進班の設置、関係者の共同行動

第2は、重点推進事項を設定して、農地集積のため行うべき事項を明確にしました。
 ー特には、集落営農組織の法人化と法人への農地集積の加速

第3は、中間管理事業実施の重点区域を明確にしました。
 ー重点実施区域の設定

関係者と全員参加で行う事業を定め、スケジュールを設定し、そのスケジュールに沿って一致協力して取り組み、重点推進事項の中でも特に重要な集落営農組織の法人化については、「集落営農組織等の法人化・農地集積支援チーム」を設立して活動する、ということで活動して参りました。その結果が203haとなったということです。

私自身は、一昨年度は個人で経営されている大型農業法人の方々を訪問していたのですが、昨年度は集落単位で農業を行う集落営農組織や法人等を訪問して、中間管理事業の説明や法人の経営内容のヒアリングなどを行いました。

2 本県での農地の中間管理事業について

中間管理事業とは、機構が間に立って優良な農地を担い手に受け渡していくことです。しかし、本県ではこれが円滑に進みません。愛媛県では受け渡していくべき担い手が決定的に少ないのです。ですから、愛媛県では担い手組織を強化する必要があります。そのため、私たちは集落営農組織の設立・法人化を支援し、すでに法人化されている場合は経営強化のお手伝いをし、そこまで至っていない地域には、担い手が集まり農地の借受けを相互に調整する「農地利用調整組織」の設立を呼び掛けております。そのために「集落営農組織等の法人化・農地集積支援チーム」も作りました。農地の集積と担い手の確保は車の両輪であると考えて推進しております。

昨年度は、法人化・農地集積支援チームを実行部隊として、目ぼしい集落営農組織を対象に、いわば“点”を対象に法人化・農地集積に取り組んできました。今年度は、これを進めて、“面”つまり法人化の可能性がある任意の集落営農組織あるいは作業受託組織を“集団的に”対象として、法人化及び法人への農地集積を進めることにしています。6月下旬から8月上旬にかけて行うことにしています。

3 農地の中間管理事業について ー思うこと

2年経過した中で、思うことが3つあります。

第1は、農業生産体制・生産構造維持対策は独自に行わなくてはならないこと。

日本国内では少子高齢化・人口減少がいよいよ顕在化してきております。第一次産業に限りませんが、産業振興の課題は、むろん販売の促進にあります。しかし同時に、人口減 少・少子高齢化に対応して、生産体制、生産構造を維持していく施策を独自に進めねばならないと思います。

当機構の「農地の中間管理事業」につきましては、優良な農地を当機構に集め、少数の担い手に渡していくことで、農業における生産構造の維持を図るものです。ただ、当機構 ではそれに加えて、農地を受け渡していく担い手の確保に重点を置き、集落営農組織の法人化を図ることと新規就農者の育成確保を同時に行っています。

第2は、構造対策の現場での推進主体は、地域農協と県の普及指導組織だということ。

構造対策を誰が現場で推進するのかと言いますと、地域農協と県の農業改良普及組織しかいないことを実感してまいりました。農地の保全、担い手の確保については、地域に根差したJAが県の農業改良普及組織とともに車の一方の車輪であります。昨年度農地集積の実績が上がっている地域は、当該地域のJA及び改良普及組織の尽力なしには実現しなかったものであります。

第3は、当機構は「愛媛県青年農業者連絡協議会」の事務局をしており、この方々との接触も密なのですが、当県の農業後継者とは具体的には協議会に結集している青年農業者であり、将来の愛媛県の農業農村を託す本体はこの方々であるということ。

常々少子高齢化、人口減少の先に見える愛媛県の農業農村の姿は実際どのような形になるのだろうか、見通したいと思ってきたのですが、青年農業者連絡協議会に集う青年農業者の方々と接していて、この方々とこの方々が行っている農業の形態こそが、愛媛県の農業の未来そのものなのだと思い至りました。

そのため、5月26日に開催された「青年農業者連絡協議会通常総会」において御承認いただき、当機構と連絡協議会との間で、「農地中間管理事業の推進に関する協定書」を締結しました。愛媛県農林水産部長さんに立合人になっていただきました。内容は、当機構を経由しながら、青年農業者連絡協議会に結集する青年農業者が自ら動いて、同じ仲間の青年農業者に対して、あるいは全くの新規就農者に対して農地集積を支援するものです。

4愛媛県での農地の中間管理事業についてー補足

まだまだ申し上げたいことがありますが、当機構の池上事務局長の説明が分かりやすいので、以下にご紹介します。

4月21日に市町、農業委員会、農協、県の出先機関の担当者等に集まっていただき「農地中間管理事業に係る市町等担当者会議」を開催しましたが、そこで局長が行った説明です。

(局長説明)

  1. まず事業の趣旨、狙いを説明する。
    仕組みを一言で言えば、担い手に農地を集積する、その支援をしていくということ。
    仕組みの骨格は、まず農地を借りたいという担い手を公募する。応募してきた担い手に対し農地を斡旋し、機構を通じて農地を貸し付けるということ。
    ただし、この仕組みには前提がある。前提とは、農地を借り受けて効率的・効果的に利用できる米作の担い手が存在するということである。
  2. しかし、愛媛においては担い手が不足している。
    なぜか。
    愛媛では、昔から農地の規模が小さく、小規模集約的農業を追求してきた。少ない面積で、いかに単価を上げていくかが課題であり、向かった先は集約的な果樹、野菜、花きであった。だからそもそも、愛媛には米麦に関する担い手が非常に少ない。しかも、その米麦の担い手さえも、高齢化によってリタイアが始まっている。米価も下がり先行きも不透明で、後継者もいない。
  3. さらに、実際は、その少ない担い手にはすでに多くの農地が集約されており、これ以上抱える余地は小さい。それも、担い手は積極的に預かっているのではなく、頼まれて受動的に預かっているのが実態である。
  4. 要するに、愛媛では中間管理事業の仕組みが前提としている担い手=農地の受け皿が、非常に脆弱であるということである。
  5. その上、担い手の年齢構造の問題がある。
    65歳以上の基幹的農業従事者の割合は7割である。10年後にはその7割は確実に75歳以上となり、リタイアの時期を迎える。リタイアとなったとき、7割が耕作していた農地を残る3割が受け継ぐことができるか。到底無理である。つまり愛媛の農業生産基盤が崩壊する危機が、目前に迫っているのである。これまで20年先とか30年先とか言って議論してきたが、それが現実に姿を現してきたのである。
  6. 継承が無理だとすれば、考えるべきは残すべき優良農地を守る体制をどう整えるかである。脆弱な受け皿に対応し、優良農地を守る鍵になるのが、意欲ある農家がまとまって作る集落営農組織である。集落の全員参加がなくとも、兼業農家も含め集落の優良な農地を守ろうとする意欲がある方々で構成される組織であれば良い。県下の集落営農組織の構成員数を見ると、小さいところは4、5人である。そこから始めれば良い。県と機構では、こういった集落営農組織の芽づくりを、任意の組織は法人化を、法人は農地の集積と経営強化を支援していこうとしている。
  7. 以上を総括すると、愛媛では、農地の集積と同時に、担い手づくり、つまり集落営農組織・法人の設立強化を進めているのである。
  8. なお、農地の流動化は、農地法3条でも農業経営基盤強化促進法でもできる。あえて中間管理事業を使うのは、3種類の機構集積協力金があるからである。とりわけ地域集積協力金はこれまでにないタイプの協力金で、地域の担い手の方々が5人でも、10人でも、15人でも協力して取り組めば交付されるし、集落営農法人にも交付される。先に申し上げた集落営農組織の立ち上げ・法人化は、この地域集積協力金を“インセンティブ”にして進めて行きたいと考えている。交付された協力金は、地域の条件整備や担い手の経営強化に生かしていただきたい。
  9. また、中間管理事業は果樹地域には関係がないという意見もある。しかし、認定農業者や中心経営体など担い手の方々が共同して取り組むことは可能なので、果樹地域においても前向きに進めていただきたい。その際には、地域の中で誰がどの農地を預かるかを担い手の中で調整する“農地の利用調整組織”を設置することも合わせて検討願いたい。